レポート概要
【書籍趣旨】
オイル、シーラント、接着剤、レジン、ゴム・・・と変幻自在に姿と機能を変えるシリコーン。その特性を把握し活用するためには、一般的に既存文献情報の理解が重要です。しかしシリコーンの場合、それらの情報発信は特定の大学とシリコーンメーカーに偏っているのが実情でした。その反作用として、化学的な論説ばかりが目立ち、工業材料としての弱点や応用技術のポイント、配合組成情報などが得られにくい状況が続いていました。これらが“シリコーンは、分かりにくい素材” と感じさせる一因でもありました。
本書は、既存のシリコーン情報提示の在り方とは一線を隔し、シリコーン全体像の理解から説く編集方針が取られています。その上で主要な製品カテゴリー別に特徴的な技術を整理し、活用のための基本的情報が具体的に説明されています。さらに、シリコーン組成物の自社開発を志す企業のために、ゴム組成物の配合設計技術に関する情報が分かりやすく解説されています。
初版は幸いにも多くの方に支持され、増刷も早期に完売となりました。以後、再刊のご要望を数多く頂く中で、改訂版の執筆を進めてきました。初版から10年の歳月を経ることになりましたが、「新版」として形にできたことを大変嬉しく思っています。本書が全てのシリコーンユーザーにとって一層の利用拡大と選択眼向上の一助となり、それが更なるシリコーン素材の躍進と拡大に寄与されることを願っています。
レポート詳細
書籍【シリコーン 全容理解と活用の技術】の特長(前版・新版共通)
✔ ユーザー視点でのわかりやすい解説
著者はユーザーとメーカー双方で10年以上の実務経験を持ち、従来情報では抽象的で理解しづらかった内容をユーザー目線で整理・再構成。セミナー講演で好評を博した解説をそのまま反映しています。研究者・技術者向けの決定版バイブルです。
✔ シリコーンゴムの配合設計に踏み込んだ実務技術書
他書にない、典型的な配合組成や独自の配合設計技術を解説。シリコーンゴムの自社開発を目指す企業や技術者にとって、実用的かつ高価値な指南書となっています。
✔ 全章を単一著者が執筆
一貫した技術レベルと視点で全体を網羅。断片的だった従来書と異なり、森と木の両方が見える“包括的技術書”に仕上がっています。著者の豊富な実務経験と自主研究に裏打ちされた深い洞察が、実務に役立つ情報と新たな気づき・発想を提供します。
新版の特長
● 内容量の増加
書籍全体として前版189ページから新版225ページへと内容量が増加しています。シリコーンが有する柔軟性・耐熱性に関する科学的な考察や、ゴムやシランカップリング剤の分析手法など、基盤知識や実務的な重要項目を追加、内容をさらに充実させました。
● 自社で技術的判断が可能となるための情報と科学的な考え方を指向
前版からの基礎化学項目は踏襲しつつ、メーカー依存を減らし、自社で設計・判断できるようになるための知識強化を指向した解説を展開しています。
● 中堅技術者向け、ゴム配合設計技術をカバー
大きな市場規模を有するシリコーンゴムの配合設計に関しては、中堅シリコーン技術者が学ぶべき専門的事項をも包含した内容で構成されています。
著者
材料技術研究所 技術コンサルタント 技術士[化学部門] 渡辺 聡志 氏
【著者紹介】
大手化学企業研究職を経て 1988年、旧東芝シリコーン株式会社入社。それまで業界では不可能視されていた数多くの高機能性シリコーン組成物を開発。また、シリコーンに適した新しい原材料開発を多分野に亘り成し遂げた。在職中の特許出願は100件を超え、学会講演や書籍執筆多数。
著者はシリコーンの専門家でありながら、ユーザー側から見た「シリコーン観」も理解共感できる希有な存在である。
目次
第1章 教養としての基礎情報
1.シリコーンの誕生と工業化の足跡
・ シリコーン技術の萌芽と進展
・ 「シリコーン」というネーミング
・ 日本におけるシリコーン工業の黎明期
2.生産財としてのマーケット展開の歩み
3.身近で活躍するシリコーン製品紹介
・ 架橋反応を伴わない製品
・ 架橋反応を伴う製品
4.シリコーンの製造方法
・ メチル基を有するシリコーンの製造方法
5.主な有機ケイ素化合物 解説
・ ケイ素と他の元素が結合する化合物の呼称
・ シランとシリケート
・ 水素原子が関係する呼称
・ ポリマーに特徴的な部分の呼称
・ シルセスキオキサン
第2章 シリコーンの化学
1.シリコーンの構造
2.分子構造が生み出す特徴
・ 耐熱性が優れる理由
・ ケイ素を主鎖に有するポリマー
3.シリコーンの化学的表現方法
・ ポリマーの種類
・ ビニル基量の表現方法
4.シリコーンの特徴を発現させる化学的要因
・ 液体としての特徴
・ 架橋物としての化学的特徴
5.多様な架橋方式
・ 一液型シリコーンの縮合架橋
・ 二液型シリコーンの縮合架橋
・ 付加型架橋
・ ラジカル架橋
・ 紫外線硬化方式
・ その他の硬化方式
6.食品添加物としての資質と作用
7.シリコーンの脆弱性および弱点
第3章 シリコーン製品の性質と活用の視点
1.シリコーンオイル
・ 分類の考え方
・ ストレートタイプ シリコーンオイル
・ 変性シリコーンオイル さらに 変性シリコーンシーラント
2.シリコーンレジン
・ 「シリコーンレジン」に区分される3 種類のシリコーン
・ シリコーンレジンの性能
3.液状シリコーンゴム
・ ジャンクションコーティング
・ 光ファイバーコーティング
・ エアバッグコーティング
4.ミラブル型シリコーンゴム
・ 混練技術
・ シリカの識別法
・ 有機ゴムとの相違点
5.その他のシリコーン製品
・ シリコーングリースとシリコーンオイルコンパウンド
・ ハードコートレジン
・ シリコーン粘着剤
第4章 シランカップリング剤の化学と選定
1.基本構造と化学的作用
・ 分子の基本構造
・ 反応機構
・ 添加必要量の考え方
・ 工業材料としての距離感
2.フィラー改質剤としての用法と留意点
・ フィラーに添加効果が認められる事例
3.ポリマー改質剤としての用法と留意点
・ ポリエチレンの架橋
・ 有機官能基の反応を利用したポリマー改質
4.カップリング効果を有する有機ケイ素化合物
・ 双官能シラン
・ 反応性シロキサンオリゴマー
第5章 低留分揮発現象と対策技術
1.低留分揮発問題の経緯
・ 低留分問題が抱えるふたつの側面
2.低留分化合物の基本的性質
3.低留分除去の方法と測定
・ 低留分量の測定
4.まとめと対応指針
第6章 シリコーン系接着剤の活用技術
1.縮合型液状接着剤の構成と留意点
・ 一液型縮合接着剤の架橋タイプごとの選択指針
酢酸型 / オキシム型 / アルコール型 / アミノキシ型 / アセトン型
2.付加型液状接着剤の構成と留意点
・ 使用上の留意点
3.紫外線(UV)硬化型液状接着剤の構成と留意点
第7章 高付加価値型シリコーンゴムの基本設計と活用の視点
1.特性付与の方法論
2.耐熱性シリコーンゴム
3.難燃性シリコーンゴム
・ 難燃触媒としての白金化合物
・一般的な難燃剤のシリコーンへの配合効果
4.導電性シリコーンゴム
・ 導電性付与材料との関係性
・ 半導電性および静電気放散性付与の配合
5.熱伝導性シリコーンゴム
6.電波制御能を有したシリコーンゴム
・ 電波遮蔽性シリコーンゴム
・ 電波吸収性シリコーンゴム
7.透明性シリコーンゴム
8.耐スチーム性シリコーンゴム
9.高引裂性シリコーンゴム
10. 高耐久性シリコーンゴム
11.押出加工用シリコーンゴム
12.電線用シリコーンゴム
13.LIMS の概念と構成
第8章 ミラブル型シリコーンゴムの配合設計入門
1.シリコーンの個性
2.ポリマー調達における着眼点
・ 架橋点の選択
3.配合設計の基本技術
4.主充填材であるシリカの配合論
・ ゴムに対するシリカの作用
5.ポリマーブレンドが不可能な理由
・ 広義のポリマーブレンドの可能性
6.シリコーンゴムに適した混練装置
7.主な加工法 および 必要とされる技術
・ プレス成型
・ 押出成形
・ カレンダー成形
・ トランスファー成形
・ インジェクション成形
第9章 応用展開を拡げるための情報
1.フッ素系化合物との比較
2.シリコーンの分析手法
3.シリコーンの安全性
4.環境問題とシリコーン
5.これからのシリコーンとの対峙
・ 国内メーカーと海外メーカー
・ ユーザーに求められる視点
余白・ 余聞・ 余韻(あとがき)
・ 新版に寄せて
・ シリコーンの活用分野の拡がり
・ シリコーン屋さんの実像と距離感
・ 雑感 実感 しめくくり